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【学生への指導・対応の原則】
1)多様な反応が出てくることを前提に
自宅待機や隔離された際には、我々教職員も含めて、以下のような様々な感情や反応が生じる可能性が指摘されています(日本赤十字社,2020:http://www.jrc.or.jp/activity/saigai/news/200327_006138.html)。
- 自身の体調や仕事や将来について心配になる
- 自由が制限されることで、怒りや不安を感じる
- 周囲の人が感染していたらどうしようと心配になる
- 起こりうる最悪な事態を考えて、思考が現実離れしたり、落ち着きが奪われたり、恐怖が強まる
- 自分自身の今までの行動が、もしかしたら潜在的な感染の原因となってしまったかもしれない、と自分を責める
- 他の人との交流が制限されているために、孤独や寂しさを感じる
- イライラしたり腹を立てたりしやすくなる
そのため、これまでみてきた学生とは異なる様子に、驚いたり戸惑うこともあるかもしれません。ただ、このような自宅待機や隔離をされた際に、こうした反応が生じるのは、とても自然なことです。そのため、事前の心構えとして、上記のような反応を含めて、多様な反応が学生に出てくることを前提としておくことで、落ち着いて対処しやすくなります。
2) 生活のリズムを維持させる
学生の中には、一日中寝続けたり、昼夜逆転の生活などの睡眠リズムの乱れが出てくることで、かえって睡眠の質を下げ、心身の健康を損なってしまう学生がいます。
そのため、教職員の皆様からも、通常の睡眠・起床のペースを保つように、アナウンスをお願いできますと幸いです。遠隔でのミーティングの時間をこれまでの対面での曜日や時間で継続することも生活リズムを安定しやすくする助けになるかもしれません。
3) 孤立を防ぐ (定期的に連絡をとる、ビデオ会議でのミーティング等)
1)の自宅待機や隔離された際のさまざまな反応で挙げたように、学生が孤立する状況を防ぐことも、学生の心身の健康を保つためにも重要なポイントです。
これまでの研究指導やミーティングなどのつながりを維持するように努めていただけますと幸いです。直接会うことはできなくても、メール等での定期的な連絡、ビデオ会議でのミーティングをして交流を保つことをお願いいたします。
また連絡の際に、「不便な状況が続くね…」「これはちょっとしんどいよね」等、お互いにこの新型コロナ対策の状況下で感じる考えや感情を共有する機会にすることも、教職員の皆様自身や学生の心身の健康を維持することにも役立つかもしれません。
4) 学生への実家への帰省の促しの判断は個別に
学生の中には、(1)留学生や新型コロナウイルス感染症者数の多い地域在住であるために、かえって実家に帰省するリスクが高い、あるいは現時点での帰省が難しい学生、(2)高齢の家族や基礎疾患をもつ家族がおり、実家への帰省により、二次的に重篤な感染者を発生させるリスクがある学生、(3)家族関係の不和から、かえって実家に帰省することで心身の健康を損なうリスクがある学生など、さまざまです。そのため、在京のままか、実家に帰省を促すかについては、上記の要因も加味して個別にご判断をお願いできますと幸いです。
5)留学生へは、特にこまめに声かけを
留学生の多くは、母国の状況の心配と同時に、異国での感染の可能性の恐怖、日本入国や出国後の母国入国に制限がかかる等、先の読めない不安の中で生活をしています。また海外からの入国者に対する、社会的に厳しい目にさらされやすい存在でもあります。加えて日本語で発信される情報の入手にタイムラグが生じる等の理由で、信頼性の高い情報を適宜入手困難な場合があります。困ってることはないか、情報が不足していないか、といったことをこまめにお声かけいただくことなども、学生の安心感につながります。
【自身のストレスに対処する】
1)ストレスを感じるのは自然な反応、という心構えをもつ
先ほどの【学生への指導・対応の原則】の1)で記載したように、危機的な状況に置かれたときに、ストレスや混乱、悲しみや怒り、恐怖等の様々な反応が出ることは自然なことです。しかし、ストレスを感じたりそれによって思うようにやりたいこと・やらなければならないことができない自分を責めたり、不調な状態を過度に恐れることで、ますます調子を崩すという悪循環に陥ってしまう可能性があります。「この非常時に、こういう状態になるのは仕方ない」ととらえ、悪化しすぎないよう踏みとどまることが大切です。
2)孤立を避ける
同僚や上司だけでなく、知人や家族との連絡を維持して下さい。ひとりよりもチームで仕事をする方が一般的にはストレスを軽減できます。また、知り得た情報の意味を相互に共有することに役立ちます。大切な人とのやり取りが自分自身の心を勇気づけることにもつながります。
3)ストレスが蓄積しているサイン(バーンアウト・二次的外傷性ストレス)がないか振り返る
極度の疲労と圧倒されている感じ(バーンアウト)や、今回のCOVID-19に感染あるいは濃厚接触者となった方々の様子を聞くことで自分もストレス反応を経験する(二次的外傷性ストレス)こともあります。
バーンアウトの兆候
- 悲しみ / 気分が晴れない
- イライラしやすい / 人を責めやすい
- 感情の欠如 / 無関心
- 周囲から切り離された感じ
- 不十分なセルフケア(身だしなみ・入浴・歯磨き等)
- 疲れている / 圧倒された感じ
- ことごとく失敗しているように感じる
- できることは何もないように感じる
- 今の状況に対処するにはアルコール・ドラッグが必要
二次的外傷性ストレスの兆候
- 悪い出来事について過度に心配または恐れる
- びっくりしやすい,常に「警戒中」のような状態
- ストレスの身体的兆候(例:心臓の鼓動)
- 悪夢またはトラウマ状況に関する繰り返しの考え
- 他人の外傷体験を自分が体験したように感じる
4)ストレスを蓄積させないよう、生活を少し工夫する
休憩をとる、バランスの良い食事を摂る、運動する、信頼できる他者へ相談するなどの対処方法は、バーンアウトや二次的外傷性ストレスの防止や軽減に役立つと言われています。教職員の皆さまの中には、感染を恐れるあまり、「散歩もいけない」「外に出てはいけない」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。ただ、「密集」「気密」「密着」のないところを散歩するなどは問題がないということが言われています。睡眠の質の向上やストレス対処、運動による体力の維持のためにも、可能であれば、毎日、人が密集しない屋外で、少し息が弾む程度の運動(ウォーキングなど)を30分程度すると良いでしょう。上記の他にも、下記のリストの内容やこれまで自分がつらかった時にその時期を乗り切る際に役立った方法があれば、その方法もぜひご活用ください。
~その他のストレス対処方法案~
- 正確で最新の新型コロナウイルスの公衆衛生情報を入手する(→WHO(世界保健機関)・厚生労働省)
- 上記の情報収集の時間と、隔離と無関係な活動(例:読書、音楽鑑賞、新しい言語の学習)とのバランスを取る
- 日々のルーティンを維持する(例:着替え、仕事・運動・学習などの日常的な活動、健康的な娯楽活動)
- 他者とのヴァーチャルなつながりを保つ(例:電話、テキストメッセージ、ビデオチャット、ソーシャルメディア)
- ペットとふれあう時間をもつ
- 健康的なライフスタイルを維持する(十分な睡眠・食事・運動。必要に応じ、電話やネットによる相談の利用)
- 隔離のストレスへの対処方法として、アルコールや薬物を使用するのは避ける
- ストレスマネジメント関連のアプリを活用する(例:マインドフルネス、リラクセーション)
自分自身だけでなく、同僚や知人の様子も気にして頂けると良いかもしれません。皆さまご自身のダメージを最少化することで、本学学生のメンタルヘルスの向上にも資することにつながります。
5)オンライン授業を含めた、イレギュラー対応時の心構えをもつ
今回の新型コロナ感染防止対策に伴い、多くの授業がオンラインで実施されることになりました。この新しい取り組みに伴い、心理的なストレスを感じる方も少なくないかと思います。そのため、下記のような心構えをもちながら、授業に臨むことで、教職員の皆さまのストレスによるダメージが少し軽くなるかもしれません。
- 無理をせず、ゆったりとした授業設計
- 「どうしてもつながらなかった時は○○を実施」など、事前にハプニングを想定して、学生に伝えておく
- すべてをオンラインに「移植」することにこだわらない
- 制約のなかで、学生に良い体験をさせることが優先
【現在、メンタルヘルスのサービスを受けている方へ】
現在、精神科治療あるいは心理的支援を受けている方は、担当医あるいは担当心理士と定期的に連絡をとることをおすすめします。状態の悪化に備えて、どのような対策があり得るかを話し合っておくと良いでしょう。
【参考資料】
American Psychological Association (2020). Keeping Your Distance to Stay Safe.(日本心理学会訳 「もしも『距離を取ること』を求められたなら:あなた自身の安全のために」)https://psych.or.jp/about/Keeping_Your_Distance_to_Stay_Safe_jp/)
Centers for Disease Control and Prevention (2020). Emergency Responders: Tips for taking care of yourself.(https://emergency.cdc.gov/coping/responders.asp)
日本赤十字社 (2020). 「感染症流行期にこころの健康を保つために」シリーズ (http://www.jrc.or.jp/activity/saigai/news/200327_006138.html)
東京大学 (2020). オンライン授業・Web会議ポータルサイト.(https://utelecon.github.io/)
学生相談ネットワーク本部(学生相談所、精神保健支援室(保健センター精神科)、コミュニケーション・サポートルーム、なんでも相談コーナー)は、2019年10月から相談支援研究開発センターに改組されました。また、新センターでは、グローバルキャンパス推進本部との連携により、留学生を対象とした相談・支援機能の強化にも取り組んでいます。学生対応にあたって、何かお困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。
相談支援研究開発センター(Center for Research on Counseling and Support Services;https://dcs.adm.u-tokyo.ac.jp/)
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