ライフサイクルと移行

2017.03.06

こんにちは、カウンセラーの慶野です。早いもので、2016年度もあと1か月を切りましたね。

ちょうど節目の時期なので、今回は、ライフサイクルと発達課題の話をしたいと思います。

ライフサイクルという言葉は、ビジネス用語としても使われるようですが、心理学ではE. H. エリクソンという心理学者の理論が有名です。人生を、成長と衰退という「上がり下がり」でとらえるのではなく、人は生涯にわたって発達していくという考えのもとに「円環的に」とらえるやり方です。初めてライフサイクル論を知った学生の頃は、発達といえば子どものことというイメージがあったので、50代、60代、70代になっても発達し続けるという考え方は、新鮮に感じたものです。

エリクソンは、人の生涯を乳児期から老年期までの8つの発達段階に分けて、それぞれの段階で直面する心理社会的発達課題を挙げました。大学生・大学院生の年齢は、青年期から成人期へ移行するまでの時期にあたります。学校を出て親から自立し、大人として社会的役割を果たせるようになるための、準備の時期と言えます。

青年期の発達課題は、「自我同一性 vs 同一性拡散」です。自我同一性(アイデンティティ)とは、「自分が自分であるという感覚」と説明されます。自分がどういう人間で、どうなっていきたいのかが何となくつかめており、欠点もあるにせよ、まあ当面それでやっていこう、という感覚を持てることです。反対に、同一性拡散とは、自分とは何なのか、どうしていけばいいのかわからなくなることです。青年期に限らず、エリクソンの発達課題は肯定的側面と否定的側面の対で示されます。両方の状態を十分経験し、その間を揺れながら成長していく、と考えるのです。

教科書などを見ると、青年期から成人期の移行の時期は、20代半ばごろと書かれていることが多いですが、置かれた状況や成長のペースは人それぞれです。何が成長の糧となるかも、人によって違います。なので、「25歳までにあれとこれをやって、アイデンティティを確立しよう」と目標を立てるというより、その時々で自分にとって大事な課題は何かを確認し、それにどんなふうに向き合うかを考えるヒントにしてもらえたらいいなと思います。

授業や研究に主体的に取り組む、友達付き合いでちょうどよい距離感をつかむ、将来の自分のイメージを持つ、恋人に自分の気持ちを伝える、など…皆さんが今取り組みたい課題は何でしょうか?

4月から、卒業や進学で環境が大きく変わる人も、そうでない人もいると思いますが、新年度が実りある年になるよう、応援しています。春が近づくと、もやもやする気持ちや、なんとなくそわそわ落ち着かない感じがすることもあると思います。そういうときは、お気軽に相談に来てくださいね。