「慣れ」について

2016.10.19

こんにちは、カウンセラーの慶野です。涼しくなってきたのはいいけれど、雨の日も多くて、どうも晴れ晴れした気持ちにはなりにくいですね。
最近、ポケットサイズの植物図鑑を買いました。私は植物にはまったく疎くて、画像だけではネットではなかなか調べづらいので、重宝しています。結局図鑑で見てもよくわからないことも多いですが、いつも歩いている道にも案外花や木の実があるのに気づいて、新鮮な感じがします。

皆さんは、一日何時間くらい眠っていますか?
必要な睡眠時間には個人差がありますが、多くの研究では、7時間~9時間くらいの間だと言われているようです。ちなみに、総務省が平成23年に行った調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間42分。年齢ごとに差はありますが、20代は男女とも7時間半~8時間の間におさまっています。これは、同年にOECD(経済協力開発機構)が国際比較調査を行った加盟国のうち、もっとも短い時間だそうです。
短時間睡眠を推奨する書籍もたくさん出版されている昨今、もっと短い睡眠時間で忙しい学生生活をやりくりしている人も、少なくないかもしれません。でも、「起きているための睡眠時間」と「よいパフォーマンスを出すための睡眠時間」は違う、という研究もあります。アメリカで行われたある実験で、48人の健康な男女を3日間の徹夜、4時間、6時間、8時間睡眠のどれかを二週間続けるという4つのグループに分けて、認知機能や注意力、運動機能を測定しました。その結果、4時間、6時間のグループは、実験を続けるうちにどんどんパフォーマンスが下がり、二週間後には、徹夜一日目、あるいは二日目のパフォーマンスと同程度にまでなっていました。もちろん6時間グループのほうが4時間グループよりましではありますが、8時間グループとは、明らかな差が認められたのです。そして興味深い点は、被験者たちが、パフォーマンスの低下を十分自覚していなかったことです。最初の数日は低下を自覚していましたが、その後は実際のパフォーマンスが下がっていっているにもかかわらず、「ほとんど変わっていない」と認識していました。

人間には、環境に慣れる力があります。だからこそ、大変な状況も頑張って乗り切れるのでしょう。でも、パフォーマンスが低下しているのに、それを普通だと感じるようになってしまうのは、少々もったいないような気がします。「慣れ」は睡眠に限った話ではなく、たとえば嗅覚も慣れ(馴化)が起きやすい感覚で、同じにおいを嗅ぎ続けていると、だんだんそのにおいを感じなくなりますよね。心理状態や生活スタイルにしても、同じ状態がずっと続くと、それ以外の可能性を思い浮かべにくくなるところがあると思います。秋は新しいことを始めるいい季節だと言いますし、体を動かすのでも、思う存分眠るのでも、普段あまりやらないことをしてみるのはどうでしょうか。新たな自分を発見することができるかもしれませんよ。