フロー理論とブラタモリ

2016.06.07

みなさん、こんにちは。カウンセラーの慶野です。梅雨入りしてじめじめした日が多いですが、せめて気分だけでもすっきり楽しく過ごしたいですよね。

私が好きでよく見ているテレビ番組のひとつに、『ブラタモリ』があります。地図・地形マニアのタモリさんと、同じくその土地の地形や歴史マニアの案内人と、地図・地形にはまったくの素人のNHKアナウンサーが、ブラブラ歩きながら街の魅力を発信していく、という番組です。私は地図や地形がそれほど好きというわけではないのですが、タモリさんと案内人が道のちょっとした勾配やら古い川の痕跡やらに興奮して、嬉しそうにしゃべりながら歩いているのを見るのが、なんだか楽しいのです。最近、国土地理院から感謝状をもらったという人気番組で、何かに夢中になっている人は、(たとえちょっと変わっていたとしても 笑)魅力的に見えるということなのでしょう。

心理学には、心の不調や病気だけでなく、健康、成長といったポジティブな側面を研究する分野もあります。その中のひとつに、フロー理論というものがあります。これは、人間が何かに没頭している(=フロー)状態について説明する理論です。一つの物事に没頭して他の何事も気にならなくなり、その経験自体が楽しいので、(それによって得られる結果ではなく)純粋にそのことをするために多くの時間や労力を費やす、という状態を指します。ピアニストが演奏に没頭しているとか、好きな勉強や趣味にのめり込んで、気がついたら何時間も経っていた、という体験が当てはまります。
心理学者のチクセントミハイ博士は、フロー状態に至る条件として、①自分の能力に対してちょうど釣り合う難易度の挑戦であること、②対象に集中し、自己コントロール感があること、③目標が明確で、直接的によい・よくないというフィードバックが返ってくること、④外部からの邪魔が入らないこと、などを挙げています。また、自己目的的にその活動に向かうことも重要だと考えられています。そう言われると、たとえば料理をするときに、「おかずとスープと副菜を、なるべく短時間で、同時に出来上がるようにする」と課題を設定すると、毎日繰り返す作業でも、けっこう楽しみながら集中してやれるような気がします。このように、フロー状態は、特別な趣味や仕事だけでなく、日常的にも体験できるものであるようです。

フロー体験を持つことができると、高い成果が上がるのはもちろん、「楽しい」「やりがいがある」と感じるので今後の活動への動機付けになりますし、自尊感情(自信)が高まって、能力的にも心理的にも成長する、などの効果が考えられます。「最近退屈で張り合いがないな」とか、逆に「いつも気が張り詰めていて安まらない」という人は、普段やっている生活や勉強への取り組み方を見直したり、思い切って好きなことだけする日を作ってみるのもいいかもしれません。