こんにちは。カウンセラーの江上です。先日柏キャンパスに行った時に,木々の葉の色が変わっているのに気づきました。もうずいぶんと秋も深まっているのですね。
今回は,「100万回生きた猫」(佐野洋子作・絵)をご紹介したいと思います。私が大好きな絵本のうちの1冊です。皆さんの年代ですと,なかなか絵本を読む機会は少ないのではないかと思いますが,有名な絵本なので知っている方も多いかもしれませんね。
あらすじは,以下の通りです。
主人公は,オスのとらねこです。このとらねこは,100万回も生きて100万回も死んだ猫です。王様,船のり,サーカスの手品使い,泥棒など,いろいろな飼い主の元でそれぞれかわいがってもらいましたが,当のとらねこは飼い主との生活が嫌いでした。このとらねこが死んだときは,どの飼い主もたいそう悲しみましたが,とらねこ自身は全く悲しくありませんでした。
あるとき,とらねこが誰の猫でもない野良猫になりました。白い美しい猫と出会い,この猫と一緒にいたいという気もちになりました。想いが通じ幸せに暮らしましたが,月日が流れ,年老いた白い猫がとらねこのそばでとうとう亡くなりました。とらねこは泣いて泣いて泣き暮らし,白いねこの隣で静かに息を引き取りました。
とらねこが嫌だと思っていた生活を過ごさなければならなかったのはとらねこにとってつらかっただろうと思いますし,とらねこが白い猫と一緒に暮らした最後の生き方はとらねこが初めて自分で選択したもので,だからこそとても幸せに過ごせたのではないかと感じました。そして100万回も生きたとらねこなのに,とても大事に想っていた白い猫と一緒に過ごした人生に満足できたからからこそ二度と生き返らなかったのかなと思っています。
私がこの本に出会ったのは皆さんと同じ年代の頃で,“自分がどう生きるか”という問いに直面することの多かった時期でした。それから随分と時間が経ちましたが,今読んでみると違った視点からの味わいがあり,長く楽しめる絵本だなと感じています。
機会があればお手にとって読んでみて下さい。