集団と個人について

2015.09.30

こんにちは、カウンセラーの川崎です。ようやく涼しくなってきましたね。私は暑いのが苦手なので、今年もなんとか生き延びたとしみじみした気持ちです。

さて、コラムでは夢に関するお話が2回続きましたが、私は夢に関する造詣がさっぱりないので、それとは違う、さりとて心理学と関連のある話をなにかしたいと思います。心理学という学問の対象は実に広大な範囲にわたっているのですが、今回は「集団」に関する研究,そのあたりで知っていることを少し。

皆さんは、「Ringelmannの綱ひき実験」というものを聞いたことはありますか。フランスの農学者Ringelmannが行った実験は,綱を水平に人力でひくというシンプルなものでしたが,その実験の主目的とは別に彼が発見したのは,共にひく人数が増えるとパフォーマンスは,個々の力の単純な総和より落ちるということでした。人数が増えるほど落ちていきます。「みんなでやれば100人力」とはならなかったんです。これは協力の難しさによる損失と「自分はちょっとくらい手抜いてもいっか」という損失の二つで説明されることが多いようです。後続の研究も大変興味深く,例えば,「自分が集団にいると思い込んでいる」だけでもきっちりパフォーマンスが低下する(手抜きが起きる)等の知見があります。ほかにも多くの研究がその後展開されていきますので興味のある方は文献にあたっていただけたら幸いです。集団プレーは悉く劣るという結論にはなっていかないようです。

もう一つ紹介したいのが,産業精神保健領域にある「ワークエンゲージメント」という仕事の熱意や活力に関する概念でして,これがクロスオーバーする(伝播する)という知見です。上司が元気だと部下も元気になる,みたいなことのようです。すごいことじゃありませんか。誰かを支える方法の一つに自分が元気になることがある等の示唆につながるのではないかと夢想します。

集団が個人に与える影響も個人が集団に与える影響も様々ですが,なんにせよ,誰かとなにかをするときは一人でするときと異なる帰結につながることが多い,といえそうです。一人で考えると何度も同じ結論になることも,誰かに話してみると意外と違う方向に話が進んだりすることがありますから,ぜひ思い立ったら,学生相談所にいらっしゃってください。

ではではまたの機会に。