- 日時
- 2008年12月8日(月)18:30~20:30
- 場所
- 本郷キャンパス 安田講堂
- 講演者
- 三浦雄一郎氏(プロスキーヤー、クラーク記念国際高等学校校長)
正門から安田講堂に続く銀杏並木の紅葉が例年より遅く見ごろとなった12月8日(月)夕刻、本郷キャンパス安田講堂にて、三浦雄一郎氏をお招きして講演会を開催いたしました。
本年10月より教養前期課程学生を対象に全学自由研究ゼミナールとして、「人間力の実践知ー心の体力をいかに育むか」を開講しており、その開講記念 として企画しました。本講演会は、本学学生・教職員のみならず一般にまで対象を広げ、当日は家族で足を運ぶ姿が多数見受けられました。
小宮山総長による開会の挨拶に引き続き、三浦雄一郎氏が75歳でエベレスト登頂に成功した際の「涙が出るほど、辛くて、厳しくて、うれしい」瞬間までを追ったDVDを上映、その後三浦氏の講演がありました。
講演内容
2003年5月、三浦氏は次男の豪太氏とともに世界最高峰エベレスト山(8848m)登頂、当時の世界最高年齢(70歳)登頂記録と初の日本人親子 同時登頂記録を樹立しました。その後、強度の不整脈を患い、2度にわたる心臓カテーテル手術を経て、再びエベレストの山頂を目指しました。標高8848 ㍍、酸素濃度は平地の4分の一。地球上で最も宇宙に近いエベレスト山頂で、75歳の三浦雄一郎の体力年齢は150歳になるともいわれ、山頂を極めるには不 整脈の克服のみならず、人類の可能性の扉を開くべく、究極のアンチエイジング(抗加齢)の試みとなりました。そして様々なハードルを越え、遂に2008年 5月26日、75歳と7ヶ月にして人類史上初、70歳を超えて2度目のエベレスト登頂に成功しました。三浦氏の挑戦の原動力は、飽くなき「好奇心」と夢を 追い続ける心でした。
冒険家として若い頃はスピードスキー競技、世界7大陸最高峰からの滑降・・など様々な世界記録をうちたてた三浦氏ですが、60歳を境に、身体と心に 脂肪がつき、いつのまにか陥っていた「メタボリック症候群」。人生においてリタイヤを意識したそのときに、101歳まで大いなる探究心をもってスキーを続 けていた父・敬三氏、そしてオリンピックで活躍していた息子・豪太氏らの姿を見て再び心にスイッチが入ったのです。
サミュエル・ウルマンの「青春」の詩にあるように、<青春>は心の在りようと同時に、「生きがい」を持つことによって身体も若返ることができる。老 いは避けられないものではありますが、高齢化社会において、いかに真摯に人生と向き合い、目標を持つことよって元気に明るく生きる工夫と努力ができるか、 それぞれの目標<エベレスト>を持つ意義と、家族と人の絆の大切さを語っていただきました。
生きがいとは?
人生、「ゆめ」「目標」を持つこと、それが最高の生きがいではないでしょうか?子供の頃夢中になって遊べる環境があった。この「遊び」とは、夢中になることができ、限界までできることである。こういった子供の頃の遊びでの経験が人生に役立っているが、残念ながら、こういった環境が失われつつあるのが現代社会である。まずは、自分でやりたいことをみつけ、その目標に向かって、あきらめないで、一歩ずつ前に進む。それは、どんなに小さいことでもよい。何か一歩でも前に踏み出す勇気をもち、まずやってみることである。
だれの遺伝子にも「冒険心」がある。できるかできないか、限界まで挑戦しないとできることもできない。無謀なことと思われることでもムリしなくてはできないことがいっぱいある。父は、夢中になるものがあり、気づいたら100歳であった。そんな生き方がいい、と三浦氏は語ってくれました。
当日は手話通訳を同時に行いました。三浦氏の講演後、亀口特任教授との対談、その後、会場から多数の質問が出て、会場内は喜びと感動に包まれたひと時を共有することができました。最後に、古田本部長より、閉会の挨拶の際、「学生には高い志を持って欲しい。三浦氏の講演は刺激になったのではないか」と結び、講演会は終わりました。