コミュニケーション・サポートルーム開設記念講演会
日 時:2010年11月30日(火)18:00~20:00
場 所:本郷キャンパス 小柴ホール
講 演: | 加藤 進昌 氏(東京大学名誉教授、昭和大学烏山病院長) |
「発達障害とはなにか~理解と支援のために~」 |
講 演: | 片岡 聡 氏(臨床薬学博士、東京大学卒業生) |
「発達障害を持つ学生の生きづらさに向き合う | |
~解決の鍵は『自己認知』と『特性説明』~」 |
ディスカッション
司会進行:佐々木 司(大学院教育学研究科教授)
渡邉慶一郎(学生相談ネットワーク本部コミュニケーション・サポートルーム室長・ 精神保健支援室室長)
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11月30日(火)、学生相談ネットワーク本部主催講演会「発達障害と共に生きる」が小柴ホールにて開催され、会場を埋めつくす200名を超える来場者がありました。
学生相談ネットワーク本部では、10月1日に、「コミュニケーション・サポートルーム」を開設しました。ここは、学生の皆さんが自分自身のコミュニケーション能力に関する悩み、注意力の問題、他の人と違う考え方・感じ方に関する悩みなどについて相談する窓口であり、その開設記念として本講演会を開催いたしました。
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はじめに、古田学生相談ネットワーク本部長の開会の挨拶、小島理事・副学長による挨拶に続き、発達障害支援に精力的に活動している加藤進昌先生と、東京大学卒業生で当事者でもある片岡聡氏から貴重なお話をうかがいました。
発達障害とはなにか~理解と支援のために~
東京大学名誉教授、昭和大学烏山病院長の加藤進昌教授による講演会では、「発達障害の理解と支援」について、講演が行われました。その中で、古典的な自閉症についてビデオを用いた解説や烏山病院での実態について説明があり、烏山病院では、発達障害に特化した専門外来やデイケアを開設しており、デイケアでは、当事者だけでなく、支援者である家族の支援も行っているとの紹介もありました。
=加藤先生 講演より=
☆古典的な小児自閉症の映像による紹介
- 自閉症児の特徴的な行動がわかりやすく示された。
- 言語の問題が原因ではないという歴史的経緯も示された。
☆烏山病院に通われている当事者の映像による紹介
- ご本人達の困りごとがそれぞれ具体的に伝えられ、発達障害の理解が深まり、
- メディアでも取り上げられて注目をされている様子が理解できた。
☆烏山病院での取組みでわかったこと
- デイケアを利用しているアスペルガー障害の方は、 高学歴であり最初の受診時の年齢は大学卒業後頃だった。
- 女性の比率は古典的自閉症よりも多く、その割には発見しにくい問題があることが分かった。
- 成人の発達障害臨床の需要は年々高まっており、毎月60人を超える新患がある。
☆今後の課題
- 烏山病院での先駆的な取組みや、視線の特性を検出する研究成果が解説された。ただし就労支援やマンパワーの問題など解決すべき課題は多く残されている。
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発達障害を持つ学生の生きづらさに向き合う
~解決の鍵は『自己認知』と『特性説明』~
東京大学卒業生で、当事者でもある片岡聡氏は、「自己認知」と「特性説明」を中心とした発達障害を持つ学生の生きづらさについて、話されました。
=片岡氏 講演より=
☆自己認知の必要性
- 発達障害は、<自分で気づけない障害>なので、当事者ごとに異なる、得意なこと・苦手なことをサポータから過不足なく説明を受けることが必要。
- それによってコミュニケーションの失敗の集積から生じるうつ病などの二次障害を防ぐとともに、自分の得意なことを活かせる進路を選択できる。
- 自分の得意なことが活かせる専門分野を持つことを早くから意識的に心がけることで有能な人材として活躍できる。
☆特性説明の必要性
- 対人スキルが苦手な場合、それを補える長所とセットで周囲に伝えた方がよい。
- 企業や研究室の少しの配慮と本人の努力で、組織に貢献し本人も自己実現する関係を築くことは十分可能
☆現代社会の問題
- 発達障害自体が問題なのではなく時代や環境がもたらす生きづらさが問題。
- ここ10年ほどの専門職に対人スキルを過剰に求める社会の傾向は行き過ぎており、サポータの支援を得ながら在学中に専門分野の学習を十分に行うべき。それが卒業してからの自分の強みになる。
- 当事者の側にも在学中に対人スキルの苦手さを補う専門的な資格等を取得する努力やコミュニケーションの失敗から学ぶ態度が必要。
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その後、コミュニケーション・サポートルーム室長であり、精神保健支援室長の渡邉慶一郎講師及び、精神保健支援室ならびに教育学研究科の佐々木司教授が加わり、ディスカッションが行われました。自分らしい生き方、人間関係のあり方など、大きなテーマで悩む青年期をどのように理解すればよいのかを会場の学生、教職員、保護者と共に考える講演会になりました。
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